国語「記述問題」の解き方

「抽象」と「具体」の違い、分かりますか?

 先月、中3生を対象に模試を実施しました。彼らにとっては受験学年になって初めての模試です。結果は上々で、これから続く受験勉強のスタートとしては順調な滑り出しとなりました。得意科目ではしっかりと点数を伸ばし、そうでない科目も復習単元に大きな穴がない。

 一方で、国語に関しては記述問題の誤答が目立ちました。みんなそれっぽいことは書いている。解答にあたって見るべき段落も合っている。だけど正答とずれがあるわけです。

 数学に解き方があるように、国語にも解き方があります。なぜか主要5科目の中で国語だけ「なんとなく解いている」「漢字くらいしか勉強していない」「勉強しても点数が上がる気がしない」といった声が聞こえてきます。残念ながら学校の国語の授業では文章の鑑賞が主で、あまり「読み方」や「書き方」などは教えてもらえません。国語が他の科目に比べて勉強してもあまり向上しないと思われている要因なのかもしれませんね。

 国語の問題の中でも、「記述問題」を苦手にする学生はとても多い印象です。先述の通り、なんとなく書けてはいる。しかし何かが足りない。その原因は「抽象」と「具体」の関係にあります。

 何かを誰かに説明するとき、私たちは大切なことを抽象的な表現で相手に伝えます。例えば子どもにもっと野菜を食べてほしいとき、「野菜は栄養が豊富なんだよ」などと言います。まさか毎回「かぼちゃにはβカロテンが豊富で、ピーマンにはビタミンCがたくさんあって…」と野菜や栄養素を一つずつ説明はしないと思います。

 この場合、「栄養」が抽象であって「かぼちゃやピーマン」、「βカロテンやビタミンC」が具体です。子どもに野菜を食べてほしい理由が様々な栄養素をバランスよく食べてほしいことだとしたら、ようは「野菜は栄養が豊富」だと伝えれば十分なわけです。具体例はあくまで抽象的な内容を補足するものでしかありません。

 国語の説明文も抽象的な内容と具体的な内容が織り交ぜられて内容が進んでいきます。作者の説明したいことは抽象的な表現。そしてそれを補完する具体例。

 では国語の問題で抽象的な部分と具体的な部分のどちらが問われやすいか。これは圧倒的に抽象的な部分です。記述問題も同じです。福岡県に限らず多くの高校入試では要約形式の記述が出題されます。平たく言えば要約とは「ようは?」という問いですので、作者の主張や説明の抽象的な部分を核に文章を構成して解答すればいいわけです。

 記述の答え方が分からない生徒はあれこれと具体例を書き並べます。説明文や論説文などの難しい文章を読んでいるとどこも大切な箇所に思えてくるのかもしれません。結果、要約をしたはずが逆にまとまりが悪くなって何を言いたいのか分からない文章が仕上がってしまいます。

他にもあります「記述のルール」

指示語は使わない

 記述の中に「それ」や「これ」など指示語は含まないようにしましょう。指示語は前述の何かを指し示す言葉であり、何かの代わりに使う言葉です。解答に指示語を含ませてしまうと、その指示語がいったい何を指すのかが本人以外は読み取れません。

 そもそも「この指示語は何を指し示しているのだろう…?」と採点者が考えるのはおかしなことです。なぜなら採点者はあくまで採点をする立場であり試験を受ける立場ではないからです。

 注意を払わずに本文の言葉をそのまま使おうとすると、えてして無意識に指示語を含ませた解答になってしまうことが多いようです。解答後に必ず指示語が入っていないかどうかを確認してください。もし指示語が含まれていれば、それを具体的な言葉に置き換える。この一手間だけで、正答の可能性は上がります。

訊かれたことに答えていない

 国語に限らず、すべての科目の記述問題に多い間違いです。たとえば「なぜ」と訊かれているにも関わらず、「~から」や「~ため」で答えていないケースです。目的を訊かれれば目的を答える、場所を訊かれれば場所を答える、などなど。

 とてもシンプルに、まずは問題文をしっかりと読み、どう答えるべきかをイメージしてから解答にあたりましょう。よくこの手の間違いをしてしまう場合は問題を流し読みをするクセがついている可能性があります。たとえば問題文に線を引っ張る等の工夫を続けるなど、意識的に練習をしてください。

記述問題をむずかしいと思わないで

 簡単にではありますが、記述問題の解き方を紹介しました。記述問題は解答の仕方が分かれば「むずかしい問題」から「正解をねらう問題」に変わります。

 国語を「あいまいな科目」と捉えていると、国語の点数はなかなか伸びなかったり、または模試の度に点数が上下する不安定な科目になってしまいます。解き方や考え方を練習して、ぜひ国語を武器にしてみてください。