学ぶ力を身につければ子どもは自分で動き出す

ある女子生徒の勉強風景から

 七ゼミでは毎週の個別演習でこちら側からゼミ生たちに演習する範囲を指定している。主にその週や前週の授業で学んだ範囲の問題となる。授業を受けた後の理解度や科目の得手不得手は子どもによって違うため、ある程度おおまかな指示を出した後は子どもたちに演習の優先順位を任せている。だからあるゼミ生は理科をやっていればあるゼミ生は英語をやっていたりする。

 そんな中で一人、指示をしていた範囲外の勉強をやっていたゼミ生がいた。しかも猛烈な勢いでペンを走らせている。何の勉強をしているのだろうとよくよくのぞいてみると、かなり前にやった単元の復習だった。

 聞くと、「新学期の4月に学校でやる実力テストに向けて復習をしておきたい」とのこと。さらに「今週習ったところはもう完璧です!」と言う。

 すばらしい。

 その週に学んだことをその週内に完璧にするということは七ゼミでは当たり前の考え方なのだが、そこに満足せずに目標設定をし実際に行動している。「自主性」ってこういうことなんだろう。

 塾としては矛盾しているかもしれないが、子どもたちにとっての勉強のゴールは「自分で学ぶ力」を身につけることだと考えている。それは正しい勉強方法であり論理的に考えられる力であり、そして自主的に目標を設定する意思でもある。そういったものが身につけば、子どもたちは自分の手と足と頭で動き出す。学びが必要なのは何も学生時代だけにかぎったことではない。大人になっても学びは続く。そこに至って学ぶ力をもっているかどうかで歩む道は大きく変わっていくのだろうと思う。

 七ゼミにはいろいろな生徒が通っている。この生徒のように自主性に任せておいても心配ない子もいれば、まだ手をつないで伴走してあげないと危なっかしい子もいる。いずれにせよゴールは同じで、「自分で学ぶ力」を身につけることだ。

 受験が終わって中学3年生が卒塾をした。彼らも入塾当初は手をつないであげないといけない子ばかりだった。それでも徐々に自分なりの学び方を覚え、そのときどきで必要なことを創意工夫し、そして最終的には私が授業で説明や解説をする時間よりも彼らが自分でインプットやアウトプットをする時間が増えていった。彼らの学力や成績がもっとも上がったタイミングはどこか。それは彼らが私の手を離れたところだ。私から必要なことを吸収しつくして、それを自分に落とし込む作業を繰り返すところに至って安定した点数を取れるようになっていった。

「自学力」を売りにする個人塾があると聞いて、最近はその塾の塾長のブログをときどき読んでいる。なかなか強烈な個性でちょっと引くところもあるが、言っていることはおっしゃる通りだと思うことが多い。その塾が20年で積み上げた素晴らしい実績がそれを裏付けている。まだ開業してから2年も経たない七ゼミではあるが、負けていられないと励まされる。

 冒頭で紹介した生徒だけでなく、七ゼミ生は入塾当時と比べてみんな勉強への取り組み方がよくなってきたと感じる。それこそ入塾してまだ1ヵ月程度しか経っていない生徒でも大きく改善されている。よく入塾面談の折に保護者の方から「子どもが勉強法を分かっていない」と相談を受けるが、「では正しい勉強法を伝えます」だけでは子どもたちは動かない。最初は実際に一緒にやって目の前で見守ってあげるところからのスタートになる。七ゼミが個別演習の時間を設けている理由の一つがここにある。

 もうすぐ新しい年度が始まる。どんどん七ゼミ生が「自学力(ちょっと拝借してみた)」を身につけていけるよう新しい試みも用意している。来年度が楽しみだ。