一冊のテキストを使いたおさない子どもたち
1ヶ月で4冊の知育テキストを終わらせた息子
けっして自慢ではない。むしろ困っている。
保育園を休ませていた5月から、妻が3歳の息子に知育テキストを何冊か買ってきた。鉛筆の使い方やハサミの使い方などを練習するためのテキストだ。
子どもが興味を持ちやすいよう電車がモチーフになっている。そして電車が好きな息子は夢中になってやっていた。いいことだ。勉強が勉強になる前に楽しく学べればそれに越したことはないと思う。
しかし最近は妻がちょっと困っている。息子が次から次へと新しいテキストを要求するようになったからだ。
幼児向けの知育本だから内容はかなり薄い。線を一本引っ張って一ページ終わりといったような構成。子どもが夢中になってやればあっという間に一冊終わる。
息子はテキストを終わらせることがうれしいらしい。一冊目を終えたときに妻も私もものすごくほめた。ほめられれば子どもはうれしい。
しかし妻の狙いは鉛筆に慣れさせること。だから練習に必ずしもテキストを使う必要はないと考えている。そもそも息子が興味を引きそうな電車の挿し絵が使われた知育テキストに限りがある。本屋を回ったりネットで調べたりしているようだが、ネタが尽きたらしい。にもかかわらず息子からの「お勉強するけん新しいテキスト買って」要求。妻もため息をつくはずだ。
「新しいプリントください」
そんな妻と息子のやりとりを見ていると、塾での同じような場面が思い出された。
たとえば試験対策のときなど、次から次へと新しい教材を欲しがる生徒がいる。解いては次、解いては次。
また問題演習になったとたん、やみくもな勢いで問題を解き進める生徒もいる。過程はどうでもいいようで、終わらせることだけが目的になっている。
テキストに直接答えを書きたがる生徒もいる。埋めれば達成感でもあるのだろうか。そして埋めたあとはお決まりのように言うわけだ。「新しい教材をください」
テキストを上手に使いこなせば学力は上がる
上に紹介したタイプの生徒は残念ながら学力は上がらない。「勉強はしてるけど点数が伸びない」典型的な例だ。
勉強はインプット(入力)とアウトプット(出力)のかけ算だ。問題演習のように単純なアウトプットだけをやっても知識の裏付けは得られない。
一方でインプットだけでもいけない。人間の記憶力や理解力なんてあてにならないもので、一度講義を聞いたり本を読んだりしただけでは完璧な再現性を得ることは難しい。アウトプットを通して理解をしているかどうか自分と対話をすることが大切になる。
テキスト一冊、プリント一枚。解けばすぐに終わる内容でもそこには多くの知が凝縮されている。だからそれだけでもていねいにやり混めば、テキトウに何冊も何枚も解くよりよほど意味がある。
「ていねいに」やり混むとはどういうことか。最低限、解き直しはしよう。間違えた問題は間違いの原因を探そう。理解できてないことは納得するまで調べよう。そしてもう一度同じ問題を解こう。だからテキストに直接答えを書き込むことは論外だ。
授業をやって満足の塾もあるのか?
七ゼミが中学生に渡すテキストは各科目二冊だ。通常授業用に少し難しい内容のものと、定期試験対策用の教科書準拠のもの。受験学年はさすがに増えるが、基本のテキストは二冊ずつ。よけいなプリントはあまり渡さない。
上記のようにまずは渡したテキストの内容を完全に理解・定着させることを生たちには求めている。
しかし他塾から移ってきた生徒の中には学力の上がらない典型的な解き方やテキストの使い方をする子もいた。地域の大手塾から来た生徒は解き直しもしなければ当たり前のようにテキストに直接答えを書き込んでいた。
個別塾から移ってきた生徒で途中式の書き方を知らない生徒もいた。計算を間違えた場合はどうやって見直せばいいか本人は分かっていなかった。
二人とも転塾の理由は「前の塾で成績が上がらなかった(むしろ下がった)から」だ。気の毒でしょうがない。正しい勉強法をすればそんなことにならなかっただろう。事実、七ゼミに移って半年ほどで定期テストの点数は大幅に伸びている。
別にこの二例をとって鬼の首をとったつもりにはならないが、あらためて塾の存在意義を考えるきっかけにはなった。授業をするだけならス○ディサプリにでも任せておいた方がいい。少なくとも学生アルバイト講師に比べればよほどハイクオリティだ。
しかし子どもたちの学力は講義を聞くだけでは伸びない。そこには質のいいアウトプットが担保されていないからだ。映像型の塾が大学受験では支持されても高校受験や中学受験に浸透しない理由はここにある。つまり高校生はある程度自分でアウトプットのクオリティを保てるが、小中学生にはそれが難しいわけだ。この学校休校期間中のオンライン狂騒はいかがだっただろうか。福岡県も動画講義を配信していたが、それらや学校教科書を活用して”主体的に”お子さまは勉強していただろうか。
現在、七ゼミ生は早速試験対策に入っている(定期テストの日程は発表されていないが…)。二冊のテキストを目一杯使って着実に定着を深めている。