どうすれば子どもは本を読むのか

 ある新聞記事で、「一カ月で一冊も本を読まない小学生の割合が50%にのぼる」と紹介されていました。小学校の図書館司書の方の立場から書かれていたので、読書率が下がってきている課題を小学校の制度や識字率などから分析されていてとても興味深いものでした。

 ここではもう少し家庭のレベルに視点を落として子どもの読書について書いてみようと思います。

「子どもが本を読まない」というお悩みを抱えている保護者の方は多いのではないでしょうか。私もこれまで実に多くの方からそういったお悩みを相談される機会がありました。みなさんそろって「読みなさいと言っても読まないんです。読むのはマンガだけ。」とおっしゃいます。

 親の立場からすると、やはりマンガではなく「本」を読んでほしいものです。私も一人の親として、自分の子どもが自主的に本を読んでくれるようになればいいなと思っています。

 では親としてどう働きかければ子どもが本を読むようになるのか…正直、私も「これ!」という必殺技を持っているわけではありません。子どもによって趣味嗜好や興味関心、性格はそれぞれですので、「必ずこうやれば」という即効薬はないのかもしれません。

 それでも私自身の経験と見聞きした知見から、参考になることがあればという前提でいくつか打開策になりそうなことを紹介したいと思います。

子どもが興味を示す本を読ませる

 さて、みなさんが自分のお子様に本を読んでほしいと思うとき、いったいどんな本を読んでほしいと期待されるでしょうか。名作と呼ばれているような小説作品、科学的な内容を紹介するような本や図鑑、小学生向けのエッセイや論説作品…きっとお子様に読んでほしいと期待されるジャンルがあると思います。

 にもかかわらず、子どもは親の勧める本を読もうとしない、よくある光景ですね。しかしこれは当然のことかもしれません。というのも、「誰だって興味のないものを読めと言われても読む気がしない」ものだからです。

 私も似たようなことをやって失敗しています。電車ばかりに興味を示す息子に、動物や虫にも興味を持ってほしいなとそういった本を与えたところ、見向きもしませんでした。寝かせ付けでやはり動物の本を読んであげようとしても、自分で本棚から電車の本を持ってきて「これ読んで」とせがんできます。

 そんなことがあって、そういえば自分は子どもの頃にどういった本を読んでいただろうと思い返してみました。少なくとも、親が勧める本を読んだことは幼児期でも小中学生の時期でも一度もなかったように思います。

 ではどういった本を読んでいたかといえば、「自分が興味のある内容の本」です。パズルの本だったり動物の図鑑だったり、年齢が上がれば歴史物だったりと、そのときどきに自分の興味のある本を読んでいました。

 また親がそれを許していてくれたことも私にとっては大きかったように思います。

 当時はまだ一つの町に必ず本屋が一つあった時代でした(最近は書店が減っています…)。月に一度くらいのペースで親が本屋に行くのについていきながら、父親が本を決めるのを待つ間になんとなく書棚に置かれていた子ども向けの本をパラパラとめくっていたことをよくおぼえています。

 そしてたいてい、「おもしろそうだったら買ってやる」と父親が言うわけです。そうやって、ちょっとずつ自分の本が増えていきました。子どもは単純なもので、ちょっとずつ自分の本が増えていくだけで、なんだかうれしくなるのかもしれません。自分の「本コレクション」が増えていく感じです。「自分の本」という特別感もあります。あんがいこういったところから子どもは本に興味を示すのかもしれません。

手を伸ばせば本がある環境を作る

 もう一つ、私が親に感謝していることとして、「家に本があった」ことです。これは私自身のコレクションではなく、親の本です。

 父親は歴史小説、母親は海外の小説が好きだったようで、そんなに大きくない本棚にそれぞれの本が詰まっていました。そんな両親の蔵書を、暇なときにパラパラとめくっていました。

 そのうちのだいたいは特におもしろくもなく、ちょっと読んではポイとする。だけどうち何冊かはちょっとおもしろいものがあったりする。おもしろいと思うと、なんとなく読んでしまうわけです。だいたい小学生の高学年あたりからでしょうか、読書のしかたがこういうスタイルに変わっていきました。

 いろんな本を手に取っていくと、次第に家にない本がほしくなったりもします。本の後ろの方に、その出版社がだしているほかの書籍の紹介ページがありますが、そこを見ながら「このタイトルおもしろそうだな」とか「同じ作者の別の作品も読んでみたいな」とか、そういった広がりが出てきます。

 つまり、読書には「とっかかり」が重要だと思うわけです。いくら「読め」と言われても、子どもからすると「何を読んでいいか分からない」となるときがあるのではないでしょうか。そこに輪をかけて「なんでもいいから読め」と言われるともう途端に読む気が失せます。

 また「一度読みだした本は最後まで読みなさい」と言う人がいます。これは子どもからすると苦痛であることが多いと思います。そもそも本の内容に興味があればそんなことを言われるような事態になっていないわけで、興味がないから放り出して「最後まで読みなさい」となる。そしてそう言われていっそう読む気を失うという悪循環です。

 興味がないなら「ポイ」でいいと思います。だって本来読書は楽しむもののはずだからです。その代わり、子どもが何に興味を示してもいいように、いろんなジャンルの本をさりげなく本棚に入れておいてあげる、こちらの方がずいぶんと生産的かもしれません。

親が本を読む姿を子どもに見せていますか?

「親が本を読まないのに、子どもが本を読むわけがない」

 と、ある人がおっしゃっていました。なるほどそうかもしれないと思いました。

 私がソファーで本を読んでいると2歳の息子が本棚から何やら本を持ってきて隣でページをめくり始めたからです。私が大学当時勉強用で読んでいた本で読めるはずもないのですが(笑)、いっしょうけんめいペラペラとめくっていました。

 あんがい読書問題の核心をついている格言かもしれません。

それでも尽きぬ、子どもの読書問題

 そうは言っても、子どもは親の思う通りには本を読んでくれないものかもしれないですね。私の両親も、「もっとタメになる本を読んでほしいのに…」などと思っていたかもしれません。

 あらためて、私も子どもに本を読ませる必殺技を持っているわけではありませんので、紹介した内容が少しでも皆様の参考になればと思います。

 また読書問題はいろいろと調べて紹介したいと思います。